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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

梅崎春生『ボロ家の春秋』。同一底本的分册已合并为一书。收入:ボロ家の春秋、Sの背中、黄色い日日、記憶、蜆、庭の眺め、凡人凡語。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 页

青空文庫

「ウソじゃないってば」僕も大声を出しました。「契約書に板の間共同をうたってないと君は言うが、一部屋だけだとも書いてないじゃないか。君の言い方は実証的でないぞ」

「それじゃ水掛け論は止しにして、現実的に行こう。失礼ながら拝見したところ、君は道具類をろくに持っていない。全然ないといってもいいくらいだ。ところが僕はごまんと持っている。持てるものが場所を広く取るのは、こりゃ当然の話じゃなかろうか」

「そんな横車があるものか」

さかんに言い争っておりますと、庭の方から、ごめん、という大声が聞えてきました。見ると何時の間に入って来たのか頑丈そうな男と肥った男が、二人並んで立っています。頑丈な男が急に眼付をするどくさせて言いました。

「不破数馬はいないかね」

「旅行に出かけました」

「トンズラしやがったな」

肥った方の男が、騎手が馬の尻をひっぱたくような恰好で、自分の尻をピタンと叩き、口惜しげに言いました。頑丈男は一歩足を踏み出し、僕ら二人を指差しながら、威圧するような声で、

「君らは一体何だ!」

「それよりもあなたは一体誰ですか」と野呂が肩をそびやかした。

「僕はその筋のものだ」