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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

梅崎春生『ボロ家の春秋』。同一底本的分册已合并为一书。收入:ボロ家の春秋、Sの背中、黄色い日日、記憶、蜆、庭の眺め、凡人凡語。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 页

青空文庫

その野呂に僕はつけつけと言ってやりました。

「さあ。これでお互いが極め付きのマヌケだということが、はっきり判っただろ。家賃の割前二千円、早く出せよ」

「イヤだよ。君が勝手に払ったんじゃないか」と野呂は口をとがらせました。

「なに。払わない。じゃ払わなくてもよろしい。その代り君はこの家の借り手じゃなくなるぞ。君は僕の居候だ!」

「居候? 居候でも結構だ」

「断っておくが、家主は居候を何時でも追い出す権利があるんだぞ。出て行かなきゃ刑事を連れて来るだけだ。そうすれば家宅侵入罪でひっくくられるぞ!」

「そんな滅法なことがあるもんか」

三十分間もそんな言い合いをしたでしょうか。いくら横車を押そうとしても、野呂自身も捺印したことだし、少しずつ自分の非を認めて折れてきました。そして結局四千円のうち千八百円を野呂が持ち、僕は二千二百円ということになりました。どうしてこんなことになったかと言うと、野呂の部屋は西側だから西日が射す。部屋の条件として四百円がた悪いというのが野呂の主張で、その主張を僕が呑んだわけですな。それも初めは八百円がた悪いと言い張るのを、やっとのことで半分に値切ったわけです。