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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

梅崎春生『ボロ家の春秋』。同一底本的分册已合并为一书。收入:ボロ家の春秋、Sの背中、黄色い日日、記憶、蜆、庭の眺め、凡人凡語。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 页

青空文庫

昼飯も抜いてかけ廻り、夕方がっくりした気持で新宿の外食券食堂でメシを食いながら、借り集めた金を勘定してみると、約四万円です。あと一万円足りない。メシを食い終えて直ちに中央線に乗り、八王子にすっ飛んだ、あとの頼みはオヤジばかりです。運よくオヤジは在宅していました。僕はその前に両手をつき、日頃の不孝を詫び、一万円貸して欲しいと頼み込みました。今日中に一万円つくらねば僕の男が立たないのだと、はらはらと落涙にまで及んだものですから、オヤジはびっくりして手提金庫の中から千円札十枚を取出して、僕に渡してくれました。ほんとに無意味な意地っぱりのために、実のオヤジにまで苦労をかけました。こうしてやっと五万円を調達することができたのです。

月曜日の夕方、学校から帰って来た野呂は僕の部屋をのぞいて、つめたい声で言いました。

「タロコ亨に一緒に行くか」

「行くよ」

僕もむっくり起き直って、無愛想に答えました。急いで身支度をととのえて、肩を並べて表に出た。両者とも終始黙々として、タロコ亭につくまで一言も口をきき合いませんでした。すでに戦いは冷戦の様相を呈し始めて来たのです。