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かぜのまたさぶろう

ポラーノの広場

宮沢 賢治

宮沢賢治『ポラーノの広場』。同一底本的分册已合并为一书。收入:風野又三郎、タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった、ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記、若い木霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 67,062 字 · 135 页

青空文庫

そしてさびしそうに、また藤の蔓を一つまみとって、にちゃにちゃと噛みはじめました。

その時、向うの丘の上を、一疋の大きな白い鳥が、日を遮ぎって飛びたちました。はねのうらは桃いろにぎらぎらひかり、まるで鳥の王さまとでもいうふう、タネリの胸は、まるで、酒でいっぱいのようになりました。タネリは、いま噛んだばかりの藤蔓を、勢よく草に吐いて高く叫びました。

「おまえは鴇という鳥かい。」

鳥は、あたりまえさというように、ゆっくり丘の向うへ飛んで、まもなく見えなくなりました。タネリは、まっしぐらに丘をかけのぼって、見えなくなった鳥を追いかけました。丘の頂上に来て見ますと、鳥は、下の小さな谷間の、枯れた蘆のなかへ、いま飛び込むところです。タネリは、北風カスケより速く、丘を馳け下りて、その黄いろな蘆むらのまわりを、ぐるぐるまわりながら叫びました。

「おおい、鴇、

おいらはひとりなんだから、

おまえはおいらと遊んでおくれ。

おいらはひとりなんだから。」

鳥は、ついておいでというように、蘆のなかから飛びだして、南の青いそらの板に、射られた矢のようにかけあがりました。タネリは、青い影法師といっしょに、ふらふらそれを追いました。