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しこんぞめについて

ポラーノの広場

宮沢 賢治

宮沢賢治『ポラーノの広場』。同一底本的分册已合并为一书。收入:紫紺染について、泉ある家、十六日、手紙 一、手紙 三、手紙 二、手紙 四、サガレンと八月、バキチの仕事。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,934 字 · 50 页

青空文庫

手紙 二

印度のガンジス河はあるとき、水が増して烈しく流されていました。

それを見ている沢山の群集の中に尊いアショウカ大王も立たれました。

大王はけらいに向って「誰かこの大河の水をさかさまにながれさせることのできるものがあるか」と問われました。

けらいは皆「陛下よ、それはとても出来ないことでございます」と答えました。

ところがこの河岸の群の中にビンズマティーと云う一人のいやしい職業の女がおりました。大王の問をみんなが口々に相伝えて云っているのをきいて「わたくしは自分の肉を売って生きているいやしい女である。けれども、今、私のようないやしいものでさえできる、まことのちからの、大きいことを王様にお目にかけよう」と云いながらまごころこめて河にいのりました。

すると、ああ、ガンジス河、幅一里にも近い大きな水の流れは、みんなの目の前で、たちまちたけりくるってさかさまにながれました。

大王はこの恐ろしくうずを巻き、はげしく鳴る音を聞いて、びっくりしてけらいに申されました「これ、これ、どうしたのじゃ。大ガンジスがさかさまにながれるではないか」

人々は次第をくわしく申し上げました。

大王は非常に感動され、すぐにその女の処に歩いて行って申されました。