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マクシム・ゴーリキイによってえがかれたふじん

マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人

宮本 百合子

「文学評論」1936(昭和11)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,801 字 · 20 页

青空文庫

人間と人間との遭遇の中には、それを時間的に考えて見るとごく短い間の出来事であり、その間にとり交された言葉や眼ざしなどが僅かなものであっても、ある人の生涯にとって非常に意味の深い結果や教訓をもたらすことがある。私が、マクシム・ゴーリキイに一度会ったということは、その当時には却って理解していなかった彼の芸術的生涯を理解するための生々とした鍵となっていることが、ゴーリキイの亡くなった今日はっきり感じられる。

既に知られている通り、ゴーリキイは一九二三年にレーニンにすすめられて、イタリーへ持病の肺療法に行った。その時分ゴーリキイは回想の中にも書いている通り、当時のソヴェト同盟の政策に全部的な同感を持つことが出来ず、急進的なインテリゲンツィアを中心とする『新生活』という雑誌を編輯してレーニンに対するブルジョア世界のデマゴギーに対して闘いつつも、一方彼の政策に対して必ずしも一致はしていない自身の見解をも披瀝していたから、このイタリー行はさまざまの風評を生んだ。レーニンはそれらの悪意から発せられる風評に対して、ロシアの大衆とゴーリキイとの正当な関係を明らかに声明した。