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マクシム・ゴーリキイによってえがかれたふじん
マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人
宮本 百合子
「文学評論」1936(昭和11)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,801 字 · 20 页
のものを求める欲望はゆがめられるどころか却って強いものとされていることが分る。この面においても、彼が少年時代から自分の置かれた周囲と自身との関係をはっきり見極めようとする気質を持っていたことを示している。だが、彼の全生涯に消すことの出来ない輝きの一点として保たれていためずらしい「智慧のあるおばあさん」例え乞食をしようとも人生の値打ちを見損いはしなかった祖母の影響を無視することは不可能である。この祖母は、八つか九つでボロ拾いをしているゴーリキイに、或る晩持ち前の魅するような話しぶりで云った。
「お前にはまだ分らないがな、結婚というものがどういうものか、婚礼というのがどんなことか。ただこれは恐ろしい不幸だよ、娘っ子が婚礼をしないで子供を生むのは。お前、ようくこれを覚えておきな。そして、大きくなってもこんなことで娘っ子をひどい目にあわせるじゃないよ。お前は女子を不憫がって暮しな。心から可愛がっておやり。なぐさみにするでなしに。こりゃ、お前に好いことを云ってやっているんだよ。」
これは祖母が、ゴーリキイの父が大胆ないい若者であって、どんな風に率直にワルワーラを嫁に求めたかということを孫に話して聞かせたついでの誡めであった。