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マクシム・ゴーリキイによってえがかれたふじん

マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人

宮本 百合子

「文学評論」1936(昭和11)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,801 字 · 20 页

青空文庫

ゴーリキイが新進作家としてトルストイに会うようになった時、トルストイは散歩の道すがらなどでゴーリキイに話したのは農民の生活と女のことであった。トルストイは最も乱暴な云い方で女のことを話した。ゴーリキイは初めトルストイが、下層出身である自分を試してそんな話をするのだと思って心持を悪くしたといっている位である。トルストイが肉体的に大きい精力をもっていたことはよく知られている。ゴーリキイにしろ、肉体的に云えば決してトルストイに劣るとは云えなかったかも知れない。青年・壮年のトルストイが、自分の肉体的な力に罪悪を感じたり、自身の官能の鋭さを荷厄介にしたりして、それを刺戟する女性を呪い憎んでいるに対して、同じ年頃のゴーリキイは、何と素朴な初恋を経験していたことであろう。この初恋は、ゴーリキイが「初恋について」の中で書いている通り、「その悪い終末にも拘らず、よい歴史として終りをつげた。」そのオリガとの訣別は、ゴーリキイとの性格のちがい人生に対する態度のちがいから起ったのであるが、自身の人間及び作家としての発展の自覚と、それに不適合な女との関係をゴーリキイはゲーテなどとも著しく違う態度で見ている。