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マクシム・ゴーリキイによってえがかれたふじん

マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人

宮本 百合子

「文学評論」1936(昭和11)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,801 字 · 20 页

青空文庫

「母」は知られている通り、ロシアの民衆の歴史にとって忘れることの出来ない一九〇五年に書き始められたものであって、この作品に於てゴーリキイは始めて、確固とした階級性を自身の作品に導き入れた。そしてその後に続いた苦しい反動時代を通して民衆に刺戟と鼓舞を与えた。作品としていろいろ批判さるべき点もあるが、ゴーリキイがその時代に「母」をロシアの大衆に贈ったということは、全く、レーニンが簡単で含蓄のあるほめ言葉を与えた通り「時宜に適った」功績であった。

その作品がおよそ二十年後の当時にあってもなお一番青年に愛されているということは私の心を動かした。面白いことにこの「母」を、プレハーノフが大変悪く批評したことである。プレハーノフはこの作品が発表された当時、既にメンセビキの頭領としてはっきりレーニンの党と対立していた。プレハーノフにとっては、これまでになく明らかな輪廓をもって自分に対立する大衆の姿を、ゴーリキイが描き出したことによって「母」を憎んだのであった。この作品によってゴーリキイが起訴された。そのことをレーニンに話したら「始めは眉をひそめたが、すぐに頭をふって、目を閉じて、いかにも特別意味あり気な笑い声をあげた。