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マクシム・ゴーリキイによってえがかれたふじん
マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人
宮本 百合子
「文学評論」1936(昭和11)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,801 字 · 20 页
そして「彼女らは、そんな生活をしている」と、三言で結んだ。話しているとそういう短い、全く民衆的な言葉をゴーリキイが非常にたくみに、表情的に使うのに驚ろかされた。例えば、ピリニャークをどう思うかと私がたずねた時、ゴーリキイは一寸肩をそびやかすようにしてたった二言、「ふうむ。あれか。」という意味のことを云った。その二言三言が無限の含蓄をもって対象を射通しているように感じられ、私はロシア語の表現力と、それを非常に生粋に生かして使うゴーリキイの、作家としての特質を今日も鮮やかに印象されている。私がゴーリキイと会ったのはその時一ぺんであった。ゴーリキイは間もなくイタリーへ戻り、一九三二年に再びソヴェトへ帰った時には彼は全くロシアで生涯を終る決心をもって帰り、世界的に祝われた文学生活四十年の祝祭を機会にゴーリキイは六十四歳の老齢にも拘らず、その精神力に於て最も若々しい新世界建設者の一人として自身を世界に示したことは、よろこばしくわれわれの記憶に刻まれている。一九二八年の秋、私はモスクワからヴォルガ河を下って南ロシアへ旅行した。夏ゴーリキイに会っているので、彼の生れ、そして育ったニージュニ・ノヴゴロドの街や、ヴォルガと流れ合っているオカ河の長い木橋、その時分でもまだアンペラ草鞋を履いて群れている船人足の姿、波止場近く