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マクシム・ゴーリキイのひとおよびげいじゅつ
マクシム・ゴーリキイの人及び芸術
宮本 百合子
「婦人公論」1933(昭和8)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,075 字 · 30 页
コロレンコとの友誼が深められた理解の上によみがえった。「チェルカッシュ」はこの時分コロレンコに励まされ、たった二日で書いたものである。
ゴーリキイは自分の文学的労作について、だんだん真面目に考えるようになって来た。それと共に、フランス小唄のうまい、美食家の、「美しく煙草を吸い、奇智にとんで、男の知人を揺ぶる」ことのやめられない貴族学校出のオリガとの生活は、彼を歩いて来た道から脱する力をもっていることを理解しはじめた。ゴーリキイはオリガとしっかり抱き合い、黙ったまま、いくらか悲しんでわかれた。後年ゴーリキイはその「初恋について」の中に書いている。「こうして私の初恋の歴史――その悪い終末にもかかわらず、よい歴史は終りを告げた」と。
巨大な歴史的矛盾の運びとトルストイとゴーリキイとの交友は、いろいろの点で興味を与えるが、女について二人の態度が全く相違しているのは面白いことである。トルストイはゴーリキイとの会話の間でも、もっとも多く神と百姓と女について話すのであったが、彼は女について妥協しがたい敵意をもち、女を罰することをよろこんだ。ゴーリキイは、女をいかなる醜悪な場面、条件においても理解すべきもの、哀れむべきもの、或は愛し尊敬すべきものとして観察し、女の情慾をもある時は一つの驚くべき力として感じている。