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マクシム・ゴーリキイのでんき

マクシム・ゴーリキイの伝記

宮本 百合子

幼年時代・少年時代・青年時代

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,543 字 · 120 页

青空文庫

と云ったのを思い出す。小僧ゴーリキイの頭の中では、漠然とそれらの印象が混り合って燃え、秘密の門の前に立っているような、どこか気がふれたような調子になった。

裁縫師の女房から本が借りられなくなると、ゴーリキイは若いのらくら男女の寄り合い場となっている街のパン屋で、副業に春画を売ったり猥褻な詩を書いてやったり、貸本をしたりしている店から、一冊一哥の損料で豆本を借り出した。そこの本はどの本も下らない、嘘とわかるようなものばかりだった。少しましなのは昔の伝説、聖者の物語である。ゴーリキイは薪割りに行った物置で読み、屋根裏で読み、蝋燭をつけて夜中に読むのであったが、婆さんは木片で燃えのこりの寸法を計った。ゴーリキイがうまく木片を見つけてそれを燃やした蝋燭の長さに合わせて切りちぢめて置かないと、翌朝、台処、家じゅうに罵声の龍巻が流れた。婆さんは、屋根裏へかけ上りゴーリキイの持ち物をほじくり返し、借本を見つけ出し、引裂いて腹いせにするのであった。

主人一族とのこういう戦いをつづけながら、「あらゆる智慧を搾って」ゴーリキイは読書をつづけた。が、本を裂かれるので、貸本屋に四十七哥という「巨額の借金」