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ムーアとう

ムーア灯

寺田 寅彦

「東京朝日新聞」1907(明治40)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,634 字 · 4 页

青空文庫

この灯の構造を簡単に云えば、長い硝子管内の空気を大部分抜いて稀薄にし、その両端に挿し込んだ電極から電流を通じて管内の空気を光らせるに過ぎぬ。空気の代りに他の瓦斯を入れることもあるが、要するに稀薄な瓦斯中を電気が通る際に、その瓦斯が光を放つというだけのことである。しかるにかくのごとき管に少時続けて電流を通すと、中の瓦斯がだんだんに稀薄の度を増し、遂にある度に達すると電流は通らなくなり、従って光も消えてしまう。それ故不断に光らせるためには、時々必要に応じて少量の瓦斯を管内に補給する仕掛けが是非とも入用である。この目的で工夫された巧妙な自働的の開閉弁を簡単に説明すれば次のような仕掛けである。すなわち管内が稀薄の度を増して電流が弱くなると同時に弁に附属したコイルの電流が強くなって、弁の一部の鉄片を引き上げる。すると鉄の浮いていた小管内の水銀面が下がって弁の細い孔が露出し、ここから瓦斯が侵入して稀薄の度を減じ、管が光り始める。同時に前記の鉄片が落ちて水銀が上がり、細孔に蓋をするという工合になっている。

この灯の光の色は管内に入れる瓦斯を巧みに調合すればどんな色でも勝手に出来る。