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ムーアとう
ムーア灯
寺田 寅彦
「東京朝日新聞」1907(明治40)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,634 字 · 4 页
例えば空気のみならば美しい桃紅色、窒素ならば黄色である。もし空気を管中に入れる前に燐の中を通してやれば非常に美しい黄金色になるという。また炭酸瓦斯を用うれば太陽の光と同じ純白色となる。但しこの白色の光を出すためには同燭力の黄色の光を出すに比べてほとんど倍の費用を要する故、あまり経済ではないが、しかしリボン商等のごとき、昼夜色染の貨物を取り扱う家では、この白光は非常に有用なものであろう。
なおこの灯の利益な点を挙げてみれば、第一前記のごとく室の隅にまで明るくなる故、倉庫の中などにこれを点ずれば、貨物の出し入れに暗さを喞つ心配はなくなる。次にこの灯の光は普通電灯のごとく一点から出るのではなく、広い面積から出るので、光が柔らかく眼を害する恐れがない。次にこの灯の寿命は四千時間以上で普通白熱灯などよりは数倍長く持つという利益がある。その他電力の経済も、他灯に優るとも劣らぬと発明者は云っているが、この点はなお試験を重ねた後でなくては判然せぬものと見ねばならぬ。
最後に少々この電灯の不都合な点を述べてみれば、こういう長い硝子管の一箇所でもちょっと罅裂が入れば全体が駄目になる。