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ラクダイよこちょう
ラクダイ横町
岡本 良雄
「銀河 3巻2号」新潮社、1948(昭和23)年2月
N4 · 入门 · 新字新假名 · 6,189 字 · 13 页
山の湖にも、風がさわぐと、大きな波がたった。けれども、海にくらべると、まるで、おとなと子どものような、ちがいであった。
そして、その子どものような湖のまわりにも、おさないころのいのきちには、いろいろのおどろきはあったのだが、その中で、いまでもまだよくおぼえているのは、いのきちが五つの年のことであった。
なんでも、しものおりた朝のことだから、秋のおわりのことであったろう。
そのとき、いのきちは、みよこという湖のほとりの旅館の女の子とあそんでいた。かけっこをしていたのか、おにごっこをしていたのか、わすれてしまったが、とにかく、いのきちは走っていたのである。うしろから、みよこが、どんどん追っかけてくる。いのきちがにげる。そして、とうとう追いつめられて、みよこの家の横の、ボートが岸にあげられてあるところまで走ってきた。そのむこうは、もう湖水で、ゆきどまり――。いのきちは、はあはあと、息をはずませながら、そのボートのまわりを、ぐるぐるまわった。みよこも、まわった。が、そのうちに、だんだんくるしくなって、いのきちは、とうとう、ボートのふちにおよぎつくようにつかまって、とまってしまった。