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「ラジオおうごんじだい」のていちょう
「ラジオ黄金時代」の底潮
宮本 百合子
「唯物論研究」1937(昭和12)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,621 字 · 11 页
そして、小作争議は十一年度五千四百九十七件。関係人員五万二千九百五十二人。土地買上に対する小作権の継続等が主な要求となっているそうである。こうして見ると、直接農村に一般ラジオ加入者が多くなったとは云えず、寧ろ、中農、地主から没落した自作農等の相場への関心或は農産品仲買関係者が、米や繭の売買で幾分かは儲けてラジオでも引こうかという工合になっていることが推察されるのである。
日本全国のラジオ聴取加入分布図というのを見ると、地方の経済事情がどれほど文化に影響しているかが瞭然としていて、心に迫って来るものがある。東京、大阪が最も密度濃いのは当然として、百世帯加入数辛うじて六以下という、ブランクによって示されている地方は、日本に於て、東北では青森、岩手の二県と、九州の突端の二つの県宮崎、鹿児島、琉球等のみである。
工業部門の職業でのラジオ加入は、昭和十一年間に僅か〇・八%の増大を示すのみであるのも、なかなか深い暗示を含んでいる数字であると思う。何故なら景気がよい、就業率は上向きだと云っても、工場に働いている人々の賃銀の上昇には残業割増、歩増などの時間外労働強化がついているのであるし、小売物価の急激な騰貴は結局、いくらかましな工場労働者の賃金をも今日では凌いでしまっている。