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レモンのはなのさくおかへ
レモンの花の咲く丘へ
国枝 史郎
「レモンの花の咲く丘へ」東京堂書店、1910(明治43)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,016 字 · 142 页
私はもうもう、気絶しそうに思われてなりませぬ。……あのそして、それからお母様はどう遊ばしたのでござります。お母様の運命が早く知りたいように思われてなりませぬ。……そして何んとなく、私の運命が、貴郎のお母様の運命と似ているように思われますのは、どうしたものでござりましょう。……ただ何んとなく、そのように思われますのは……。
公子 同じような誘惑が、振りかかっているからではござりますまいか。(四方を見)ああ、如何にも今夜は、あの晩によく似た晩でござります。(梟の啼き声聞こゆ)あれ梟も啼いているではござりませぬか。
女子 (胸に手をあてる)悪い運命を導いて来るような厭な鳥の声でござりますこと。……そして今夜に限って、あのように啼いている。……お母様はそれからどう遊ばしたのでござります。若様。
公子 母の姿が岩の頂上に立ったのを窓越しに見たのが、最後の眺めでござりました。(間)翌日、母の白い屍は、海の面に浮いておりました。あおむきに水に浮いている様子が人魚そっくりでござりました。(間)鴛鴦の浮くべき海の上に、人魚の屍が浮かんだのでござります。(間)恐ろしい誘惑ではござりませぬか。