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レーリーきょう(ロード レーリー)
レーリー卿(Lord Rayleigh)
寺田 寅彦
「岩波講座 物理学及び科学」岩波書店、1930(昭和5)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,439 字 · 55 页
論文の総数四六六である。彼の論文のスタイルはコンサイスで一種独特の風貌がある。数学的論文と純実験的論文とが併立しているのも目に立つ。彼はまた論文の終りに短い摘要を添えるのが嫌いであった。理由は、摘要だけ見たのでは実験の内容にはないものまでも責を負わされる虞があるというのであった。
彼は自分でもしばしば言明したように、全く自分の楽しみのために学問をし研究をした。興味の向くままに六かしい数学的理論もやれば、甲虫の色を調べたり、コーヒー茶碗をガラス板の上に滑らせたりした。彼にはいわゆる専門はなかった。しかし何でも、手を着ければ端的に問題の要点に肉迫した。
彼自身は楽しみにやっていても、学界はその効績を認めない訳には行かなかった。一九〇二年エドワード王が Order of Merit を設けた時に最初に選ばれた十二人の中にレーリーの名も入っていた。ケルヴィンやキチナー将軍や画家のワッツなども顔を並べていた。また一九〇四年にはノーベル賞を受けた。一九〇五年には王立協会の会長に選ばれたが、五年の期限が満たない三年後に辞任した。その理由は、長い海外旅行をしたいというのと、少し耳が遠くて困るというのと、外国語がよくしゃべれないので外国人との交渉に不便だというのであった。