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レーリーきょう(ロード レーリー)
レーリー卿(Lord Rayleigh)
寺田 寅彦
「岩波講座 物理学及び科学」岩波書店、1930(昭和5)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,439 字 · 55 页
一九〇八年ケンブリッジで名誉総長デヴォンシャヤー公が死んで、その椅子がレーリーに廻って来た。就任式の仰々しい行列は彼にいささか滑稽に思われたようであった。見物人の群衆の中に交じった自分の息子を発見した時、眼をパチパチとさせて眼くばせをした。そういう心持を眼で伝えたのである。この時の記念としてレーリー賞の資金が集められた。彼はまた大学財政の窮乏を救うためにカーネギーを説いたり、タイムス紙を通して世間に訴えたりした。一九〇九年のダーウィン百年祭はレーリー総長の司会で行われたが、その時の彼の追懐演説に現われたダーウィンの風貌は興味が深いものであった。また一九一一年に出た版権法修正案が大学の権利を脅かすものであったので、総長レーリーは上院で反対演説をした。
レーリーは前から南洋の島々を見たいという希望をもっていた。一九〇八―九年の冬の間に南アフリカへ遊びに来ないかという招待を、時の南アの長官セルボーン卿から受けたので、そのついでに南洋へも廻る気で出かけた。しかしケープからシドニーへの荒い旅路は遂に彼の南洋行を思い止まらせた。アフリカでキンバーレー、ヴィクトリア滝を見てプレトリアへの途上赤痢に罹り、その報知はロンドンを驚かせた。