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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
「昴」1909(明治42)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页
「お休なさらないの」
「己は寝ない積だ」
「まあ」
「お前はひどく血色が悪いではないか。どうかしたのかい」
「ええ。胸膜炎で二三日前まで病院にいましたの」
「そうかい。それでいて、客の処へ出るのはつらかろうなあ」
「いいえ。もう心持は何ともありませんの」
「ふむ」
暫く顔を見合せている。女がやはり笑いながら云う。
「あなた可笑しゅうございますわ」
「何が」
「こうしていては」
「そんなら腕角力をしよう」
「すぐ負けてしまうわ」
「なに。己もあまり強くはない。女の腕というものは馬鹿にならないものだそうだ」
「あら。旨い事を仰ゃるのね」
「さあ来い」
煎餅布団の上に肘を突いて、右の手を握り合った。女は力も何もありはしない。いくら力を入れて見ろと云ってもだめである。僕は何の力をも費さずに押え附けてしまった。
障子の外から、古賀と三枝とが声を掛けた。僕は二人と一しょに帰った。これが僕の二度目の吉原通であった。そして最後の吉原通である。序だから、ここに書き添えて置く。
*
二十一になった。
洋行がいよいよ極まった。しかし辞令は貰わない。大学の都合で、夏の事になるだろうということである。