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ウィタ・セクスアリス

ヰタ・セクスアリス

森 鴎外

「昴」1909(明治42)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页

青空文庫

いろいろな縁談で、お母様が頻に気を揉んでお出なさる。

古賀が、後々の為めに好かろうと云うので、僕を某省の参事官の望月君という人に引き合せた。この人は某元老の壻さんである。下谷の大茂という待合で遊ばれる。心安くなるには、やはりその待合へも行くが好いということになる。折々行く。芸者を四五人呼んで、馬鹿話をして帰る。その頃は物価が安くて、割前が三四円位であった。僕は古賀の勤めている役所の翻訳物を受け合ってしていたので、懐中が温であった。その頃は法律の翻訳なんぞは、一枚三円位取れたのである。五十円位の金はいつも持っていた。ところが、僕が一しょに行くと、望月君がきっと酒ばかり飲んで帰られる。古賀が云うには、「あれは君に遠慮しておられるのかも知れない。僕が遠慮のないようにして遣ろう」と云った。そして或晩古賀がお上に話をした。僕がこの時古賀に抗抵しなかったのも、芸者はどんな事をするものかと思う Neugierde があったからだろう。

一月の末でもあったか。寒い晩であった。いつもの通三人で、下谷芸者の若くて綺麗なのを集めて、下らない事をしゃべっている。そこへお上が這入って来る。