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ウィタ・セクスアリス

ヰタ・セクスアリス

森 鴎外

「昴」1909(明治42)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页

青空文庫

中には一口噺か何かを書いて、わざと秘密らしく帯封をして、かの可笑しな画を欲しがるものに売るのである。

僕は子供ではあったが、問答の意味をおおよそ解した。しかしその問答の意味よりは、※(「さんずい+(日/工)」、第4水準2-78-60)麻の自在に東京詞を使うのが、僕の注意を引いた。そして※(「さんずい+(日/工)」、第4水準2-78-60)麻は何故これ程東京詞が使えるのに、お屋敷では国詞を使うだろうかということを考えて見た。国もの同志で国詞を使うのは、固より当然である。しかし※(「さんずい+(日/工)」、第4水準2-78-60)麻が二枚の舌を使うのは、その為めばかりではないらしい。彼は上役の前で淳樸を装うために国詞を使うのではあるまいか。僕はその頃からもうこんな事を考えた。僕はぼんやりしているかと思うと、又余り無邪気でない処のある子であった。

観音堂に登る。僕の物を知りたがる欲は、僕の目を、只真黒な格子の奥の、蝋燭の光の覚束ない辺に注がせる。蹲んで、体を鰕のように曲げて、何かぐずぐず云って祈っている爺さん婆あさん達の背後を、堂の東側へ折れて、おりおりかちゃかちゃという賽銭の音を聞き棄てて堂を降りる。