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ウィタ・セクスアリス

ヰタ・セクスアリス

森 鴎外

「昴」1909(明治42)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页

青空文庫

この辺には乞食が沢山いた。その間に、五色の沙で書画をかいて見せる男がある。少し広い処に、大勢の見物が輪を作って取り巻いているのは、居合ぬきである。※(「さんずい+(日/工)」、第4水準2-78-60)麻と一しょに暫く立って見ていた。刀が段々に掛けてある。下の段になるだけ長いのである。色々な事を饒舌っているが、なかなか抜かない。そのうち※(「さんずい+(日/工)」、第4水準2-78-60)麻が、つと退くから、何か分からずに附いて退いた。振り返って見れば、銭を集める男が、近処へ来ていたのであった。

楊弓店のある、狭い巷に出た。どの店にもお白いを附けた女のいるのを、僕は珍らしく思って見た。お父様はここへは連れて来なかったのである。僕はこの女達の顔に就いて、不思議な観察をした。彼等の顔は当前の人間の顔ではないのである。今まで見た、普通の女とは違って、皆一種の stereotype な顔をしている。僕の今の詞を以て言えば、この女達の顔は凝結した表情を示しているのである。僕はその顔を見てこう思った。何故皆揃ってあんな顔をしているのであろう。子供に好い子をお為というと、変な顔をする。