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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
「昴」1909(明治42)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页
夏休の間の出来事である。卒業試験が近くなるので、どこかいつもより静かな処にいて勉強したいと思った。さいわい向島の家が借手がなくて明いている。そこへ書物を持って這入る。お母様が二三日来ていて、世話をして下さる。しかし材料さえ集めて置いて貰えば、僕が自炊をするというのである。お母様は覚束ないと仰ゃる。
この話を隣の植木屋が聞いた。お父様が畠に物を作る相談をせられるので、心安くなっていた植木屋である。この植木屋のお上さんが、親切にもこういう提議をした。植木屋にお蝶という十四になる娘がある。体は十六位かと見えるように大きいが、まるで子供である。煮炊もろくな事は出来ない。しかし若旦那よりは上手であろう。これを貸してくれようと云うのである。お母様は同意なすった。僕も初から女を置くということには反対していたが、鼻を垂らして赤ん坊を背負っていたのを知っている、あのお蝶なら好かろうというので、同意した。
お蝶は朝来て夜帰る。むくむくと太った娘で、大きな顔に小さな目鼻が附いている。もう鼻は垂らさない。島田に結っている。これは僕のお召使になるというので、自ら好んで結って貰ったのだそうだが、大きな顔の上に小さい島田髷が載っている工合は随分可笑しい。