轻松读懂日语经典作品
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ひとつのできごと
一つの出来事
宮本 百合子
「大観」1919(大正8)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,024 字 · 23 页
自分の持って生れた気質と、周囲の雑多な無数な箇性との折衝をも考えてみる。しかし、ガルスオーシーの小説の主人公のように“Curious thing――life! Curious world! Curious forces in it――making one do the opposite of what one wished!”と云って、差し上る月光の柔かい夜気のうちに溜息を吐くだけではすまされない。結局人間一人の力は、その不可見な力に及ぶものではない。人間にはあまり多過ぎる。人間にはあまり高すぎる、「私共はつまり出来るだけ親切になり扶(たす)け合い、多くを予期しないと共にあまり多くのことをも考えずにやって行くのだ。thats' all!」そうだろうか、ほんとにそれが thats' all なのだろうか。
近頃の私の経験は、自分が「貧しき人々の群」を書いたときよりは苦しんでいる。だからあんなに泣きはしない。そう雑作なく涙をこぼしてはいられない。けれども、私の心はこういうことに逢うとハッと撃たれて動けなくなる、ほんとに動けなくなる――。
やや暫く経ってから、私は足音を忍ばすようにして自分の部屋へ上って行った。