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せんきゅうひゃくさんじゅうしちねんをおくるにほん
一九三七年を送る日本
戸坂 潤
「改造」改造社、1937(昭和12)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,500 字 · 23 页
「文化問題」についての論議は、時事的評論雑誌や科学的評論雑誌の上で跡を絶たない。ジード旅行記やその修正版、それに対する各方面の批評(最近はフォイヒトヴァンガーによる批評)、それからこれに連関してソヴェート清党運動についての文化的関心、も亦見逃すことの出来ないセンセーションであった。だが何と云っても問題の中心は日本文化にあったと見ねばならぬ。「日本的なるもの」や「日本文化の伝統」の問題はそのままの形としては、丁度ヒューマニズムがそうであったように、云わば行方が知れなくなった。と云うよりも意外の処へ(実は意外ではないのだが)抜け穴を有っていた。そこでそういう形で議論をするのが、抑々莫迦々々しいのだということを、今年の文化人は気づいたようである。そこで興味のあったのは所謂国民文学論であろう。その提唱者によると、国民に於ける階級の対立が之まで如何に深く国民の文学そのものに刻印したかなどというようなことは、キョトンと忘れたかのように、国民は国民だから国民の文学を有たねばならぬ、国民的人物、国民的性格を作品の内に打ち出さねばならぬと主張するのである。之ではまるで、専ら例の政治的な国内相剋緩和のための文学のように見える。