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せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる
一九三二年の春
宮本 百合子
「改造」(はじめの約15枚分)1932(昭和7)年8月号、「プロレタリア文学」(残りを追加して再掲)1933(昭和8)年1~2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,942 字 · 44 页
ところが、共同主催者であった女子青年団の方では、悪い講演会であったとは思わぬという役員の決議で、辞職を承認せず、今もがんばっているという○○君の話であった。女子青年団の方では役員の八分が工場の女工さんで、ほとんどサークル員でしめられているというのは興味あることだった。
○○君は自身評議会時代から階級的闘士として立つ以前、製糸工場で「見番」をやっていた経験がある。私に製糸工場の組織を図解して説明してくれた。長野県だけでもおよそ九万人の婦人労働者がいる。もちろん繊維が主なのだが、製糸工場の組織をみて、わたしは、それがどんなに女工を搾取するためにだけ恥なく仕組まれているかということを痛感した。経営の内部にどんなことがあろうとも、女工は参与し得ないように組織されている。春になると、勧誘員に山の奥から二十人三十人と束にして、若い貧農の娘たちがつれて来られる。彼女たちはそのまま寄宿舎へしめ込まれ、十時間労働でしぼられ、用がなくなると、また勧誘員に追いたてられつつ故郷へと一団になって戻ってゆく。来年はそのときまた改めて契約される。慢性的な季節労働の性質と全然産業奴隷的な悪条件のために、製糸女工の水準は最も低いところにのこされているのである。