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ひとつぼかん

一坪館

海野 十三

未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,902 字 · 56 页

青空文庫

「さあ、ここで、ぼくはすばらしい仕事を始めるんだ。なにしろ、こうして見わたしたところ、まだ誰も店をひらいていないじゃないか」

源一は、今日から彼の所有となった一坪の焼け土の上に立って、あたりをぐるっと見まわした。目のとどくかぎり、どこもここも焼の原である。いや、まだぷすぷすと、煙のあがっているビルもある。

人影一つ見えない。みんなどこへ行ってしまったのだろうか。

「ほほう。ぼくが今ここに店を出したら、ぼくは戦災後、復興の一番のりをするわけだ。よし今日中に店を出そう」

銀座復興の店開きの第一番を、少年がひきうけるのはゆかいではないかと源一はいよいようれしくなった。

「じゃあ、いったい何の店を開いたらいいだろうか」

さあ何がいいか。源一は一坪の焼土を四角に歩きまわって、いろいろと考えた。

この土地をゆずりうけるとき、彼は、ここに煙草やをひらくつもりだった。昔からその角に煙草やがあって、はんじょうしていたから、やはり煙草やがいいと思ったのだ。

だが、今、煙草やの店を出すのはどうかしらんと考えた。焼野原一番のりの店開きが、煙草やさんではどうもおもしろくない。