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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
君は驚いた様だが、実はこんな種があるんだよ。この破れた紙切だ。一寸読んで見給え」
それは半紙の半分程の分量の紙が、細かく切り裂かれた上に、所々焼けこげがあって、多分手紙の切れはしなのであろうが、とても完全に読むことは出来なかった。
……御依頼により埋葬仕……と小生とかの蕗屋の三人のみに有之……右につき篤と御談合申上度……郷表(一二字分不明)六三中村……御一読の上は必ず火中……
どう見直してもこれ以上は分らなかった。
「昨夕の君の行先を当たのは、この郷表うんぬんの文句からだ。六三とあるのは番地としか考えられないから、上の郷表に相当する町名は、東京中に中之郷O町の外にない。僕は早速あすこへ行って見た。そして、訳なく中村寓と表札の出た小さな門のある家を発見した。中へ入って聾の婆さんにも逢った。主人は勤め人らしいことをいっていたけれど本当かどうか分らない。中村という人物はまるで姿を見せなかったが、僕はあの家そのものについて研究した。そして色々悟る所もあった。若し僕の想像が確だとすると、この事件には実に恐しい人物が介在している。そいつの呪が事件全体を非常に複雑なものにしている。