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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
たった一つ五燭の街燈が、倒れた石碑などを照していた。そこを頭でっかちの怪物が、ヒョコヒョコと急いでいる有様は、何だか本当らしくなかった。今夜の出来事は最初から夢の様な気がした。今にもたれかが「オイ、紋三さん、紋三さん」といって揺り起してくれるのではないかと思われた。
一寸法師は尾行者を意識しているのかどうか、長い間一度もうしろを見なかった。しかし、紋三の方では十分用心して、相手が一つの曲り角を曲るまでは、姿を現さない様にして、軒下から軒下を伝って行った。
墓地の所を一曲りすると小さな寺の門に出た。一寸法師はそこで一寸うしろを振返って、だれもいないのを確めると、ギイと潜り戸を開けて、門の中に姿を消した。紋三は隠れ場所から出て、大急ぎで門の前まで来た。そして、暫く様子をうかがってから、ソッと潜り戸を押して見たが、内部からかんぬきをかけたと見え、小揺ぎもしなかった。潜り戸のしまりがしてなかったところを見ると、一寸法師はこの寺の中に住んでいるのかも知れない。だが必ずそうとは極まらぬ。そういう内にも彼奴は、裏の墓地の方から逃げだしているかも知れないのだ。
紋三は大急ぎで、元の道を引返し、杉垣の破れから寺の裏手をのぞいて見た。