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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

この写真に気づいた時から僕の意見は確定したのだ」

明智はそういって、台の上から山野家一同の撮した写真を取って、田村氏や刑事部長の方へさし出した。それには、三千子の顔に妙ないたずらがしてあった。彼女の眉を、すっかり胡粉で塗りつぶし、その下に眼鏡の枠が書いてあった。

それを見ると田村氏と刑事部長は顔を見合せて感嘆した様に「似ている」と呟やいた。

「似ているでしょう。三千子の眉をとって、眼鏡をかけさせ、技巧たっぷりの表情を、もっと静にすれば、小松と見分けがつきません。それも道理です。小松というのは実は山野氏の隠し子で、三千子とは姉妹なのだから。ただ、一方はおとなしやかな無表情、一方は技巧たっぷりのおてんば娘なのと、それに髪の形だとか眼鏡や眉の相違があるので、一寸気がつかないだけです。分りますか。つまり三千子はあの晩、恋敵の異母妹といい争った末、激情のあまり、ついあんなことをしてしまった。石膏像をなげつけて過って相手を殺してしまったのです。そして、咄嗟の場合、小松に化けるという妙案を思いついた訳です」

「それはどういう意味だね。小間使に化けて見たところで、罪が消える訳でもあるまいが」