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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
明智は意味ありげな調子だった。「何も悔悟しているものに罪をきせることはないのだからね。死ぬ者貧乏だよ。それにあいつは希代の悪党なんだから」
「それはどういう意味でしょうか」
紋三は変な顔をして尋ねた。
「例えばだね、小松の絞め殺されていることが、キューピー人形を毀すまでもなく、前もって僕に分っていたのかも知れない。そして、悔悟した三千子さんを救う為に、死にかかっている一寸法師をくどき落して、うその告白をさせる……巧に仕組まれた一場のお芝居。という様なことは全く考えられないだろうか。分るかい。……罪の転嫁。……場合によっちゃ悪いことではない。殊に三千子さんの様な美しい存在をこの世からなくしない為にはね。あの人は君、全く悔悟しているのだよ」
素人探偵明智小五郎は、春のよい暗を大またに歩きながら、すがすがしい声でいった。
「一寸法師」は新聞連載の折、新聞社に活字がない為、漢字を仮名にしたり、当て字を使った個所が非常に多いのですが、それを一々元の漢字に直す程、文字から来る感じを重んずる種類の小説でありませんので、態とそのままにして置きました。一日分ずつ書いたのを纏めた為に、続き具合のおかしい所もありますが、それも直さないで置きました。