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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
坊さんは渋面を作って、気違いに取合っている暇はないといわぬばかりであった。
「イヤどうもお邪魔しました」
紋三は仕方なく立上った。そして、ほとんど夢中で門の外まで歩いた。
「己は確にどうかしている。何という気違いじみた訪問をやったものだろう。坊主に嘲弄されるのは当然だ。だがあの調子では、奴さん別にうしろ暗いところがあるようでもない。どうも、やっぱり訳が分らないな」
彼は暫くぼんやりして、門前にたたずんでいたが、ふと思いついて、お婆さんの居眠りをしている駄菓子屋の店先へやって行った。
「お婆さん、お婆さん、そこにあるせんべいを五十銭ばかり下さい」彼は欲しくもない買物をして何気なく尋ねて見た。「この辺に子供のような脊の低い、つまり小人島だね、そういう不具者はいないだろうか。お婆さんは知らないかね」
「左様でございますね。私も永年この辺に住んでおりますが、そんなものは見かけたことも、うわさに聞いたこともございませんね」
婆さんはけげんらしく答えた。
「この前のお寺ね、和尚さんのほかにどんな人が住んでいるのだい」
「アア、養源寺ですか。あすこはあなた妙なお寺でございましてね、お住持お一人切りなんですよ。