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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
この最後のものには、何者かの片手の指紋がハッキリと押されてあった。明智はそこへひょいと一つの虫眼鏡を放り出していった。
「奥さん。この紙切れの五つの指紋と、御嬢さんのお部屋にあった吸取紙や、化粧品の指紋と比べて御覧なさい。虫眼鏡で大きくすれば、素人でもよく分りますよ」
「マア」夫人は青くなって、身を引く様にした。「どうかあなたお調べ下さいまし。私には何だか怖くって……」
「イヤ、僕はもうさっき調べて見て、この両方の指紋が同じものだってことを知っているのですが、奥さんにも一度、見て置いて頂く方がいいのです」
「あなたが御覧なすって、同じものなれば、それで十分ではございませんか。私などが見ました所で、どうせよくは分らないのですから」
「そうですか……ではお話しますが、奥さん、びっくりしてはいけません。お嬢さんは何者かに殺されなすったのです。こちらのはその死骸の片手から取った指紋なのです」
山野夫人は、フラフラと身体がくずれ相になるのをやっと堪えた。そして大きな目で明智をにらむ様にして、どもりながらいった。
「で、その死骸というのは一体どこにあったのでございますか」