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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

ゴミの中へお嬢さんの身体を隠して持去ったかも知れないという、あの衛生人夫ですね。僕はあの翌日一杯かかって、出来るだけ調べたのですが、吾妻橋の東詰までは、色々な人の記憶を引出して、どうにかこうにか跡をつけることが出来ましたけれど、それから先は、橋を渡ったのか、河岸を厩橋の方へ行ったのか、それとも左に折れて業平橋の方に向ったのか、どう手を尽しても分らないのです。現に唯今でも僕の配下のものが一人その方の捜索にかかり切っている様な訳ですが、まだ何の吉報もありません。

もう一つは、お宅の蕗屋という運転手です」明智は何かニヤニヤ笑って夫人の顔を見た。「奥さんはお隠しなすっていた様ですが、それは御無理とは思いませんが、お隠しなさるということはどちらかといえば却って人に穿鑿心を起させるものです。僕は早速蕗屋のことを調べました。そして、恐らく奥様以上に詳しい事情を知ることが出来たのです。お嬢さんと蕗屋との間柄は、双方真面目だった様ですが、どちらかといえばお嬢さんの方が一層熱心だったかも知れません。これは多分あなたも御承知だろうと思います。ところが蕗屋はそれ以前から小間使の小松(あの朝お嬢さんの寝台が空っぽになっているのを発見した女ですね)この小松とかなり深い関係があった。