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いちねんのけい

一年の計

佐々木 邦

「面白倶楽部」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,627 字 · 14 页

青空文庫

左から抜けようとすると又左へ動いた。

「一体何本あるんだろう?」

と大地に坐って眺め入っている中に睡気を催して横になった。直ぐ側が溝だ。片岡君はもう少しのところまで漕ぎつけた。

幸いそこへ巡査が廻って来て、

「もし/\」

と揺り覚してくれた。

「何だ?」

「何だじゃありません。こゝは往来ですぞ」

「往来だ?」

と片岡君は欠伸をした。可なり長く寝ていたと見えた。

「もう大分更けていますから、早くお家へお帰りなさい」

「…………」

「もう寝ちゃいけません。お宅まで送りましょう。何処ですか?」

と巡査は片岡君を扶け起そうとした。

「赤坂だ」

「遠方ですな。もう電車はない。何うです? 俥を呼んで来て上げますから、大人しく帰って下さい」

「帰る」

と片岡君はそのまゝ又寝てしまった。

元日の深更に俥屋は客待ちをしていない。巡査は俥屋を叩き起すのに手間を取った。矢張り酔っていて出渋るのをお願い申して現場へ来て見ると、片岡君は溝の中で鼾をかいていた。

「旦那、これは御免蒙りますよ。溝に落ちているんじゃ少し話が違います」

と俥屋はプリ/\した。

「いや、先刻は落ちていなかったんだ。まあ、揚げてやってくれ」