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いちねんのけい
一年の計
佐々木 邦
「面白倶楽部」1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,627 字 · 14 页
「しかし新年宴会までは飲ませておくれ」
と細君のことを考えていたのだった。
「へん、こんなになっても未だ飲む算段をしていなさるか?」
と笑って、俥屋は荷車を持ち上げた。弾みを食って片岡君は仰向けに倒れたが、そのまゝ又寝てしまった。
その頃片岡夫人は女中と交代に門口を出たり入ったりしていた。夕刻主人が戻らなかった時、これはもう禁酒が破れたものと察したが、十時十一時と音沙汰がなかったので不安を催した。それでも最初の中は、
「清や、旦那さまは又溝へでも落ちたんだよ。あんなに溝の好きな人はないからね」
と強いことを言って高を括っていた。それから十二時までには、
「清や、私、気が気じゃないよ。まさかお濠じゃあるまいと思うけれども」
と自動車の音が聞える度毎に門へ出て見た。一時近くになった時、
「真実に人の心も知らないで……」
と細君はもう居ても立っても落ちつかなかった。大川じゃなかろうかとまで考えたのである。
一時半になった。世間は森閑と静まった。もう自動車も通らない。
「奥さま、旦那さまが……荷車で……」
と突然女中が門のところから喚いた。
「はっ!」
と細君は膝についていた両手を辷らせた。