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いちねんのけい

一年の計

佐々木 邦

「面白倶楽部」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,627 字 · 14 页

青空文庫

唯年を取る丈けの分なら何にも面白可笑しいことはない」

「それも然うだな」

「僕は今君の来るところを二階から見ていたんだよ。これぞ好き敵御参なれとね」

「道理でうまく捉まった」

「覚悟をし給え。その代り明日は此方から押しかけて行く」

「待っているよ」

と尚お胆力を試している中に奥さんがお膳を運んで来た。正月は何処でも支度がしてあるから手っ取り早い。

「吉例だ。屠蘇から先になさい」

と津田君が命じた。

片岡君は発表が後れると共に、

「仮りに今から禁酒するとしても……」

と考え始めて、

「……明日明後日は来客があるに定っているし、その先に新年宴会というど豪い奴が控えている。無論決心は堅い。今更翻すのではない。交際上拠ろなく延すのだ。何も元日早々こゝの奥さんに恥をかゝせることはない」

と次いで度胸を据えたから、

「何うぞお一つ」

と奥さんに勧められた時、

「恐れ入ります」

と受けて少しも悪びれた様子を見せなかった。

片岡君は朝から鎧を着たような重苦しい気分に圧迫されていたが、今やそれが取れて悉皆寛ろいだ。元日が元日らしくなって来た。新年宴会までだと思えば心に疚しいところもなく、年礼にも励みが出て、それから三四軒廻った。