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ひとすじのなわ

一条の縄

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,201 字 · 11 页

青空文庫

其等の種々な音をにぎやかに立てながら、彼等は堤の草の間をほじったり、追っかけっこをしたりして、四季の分ちなく彼等には無上のものである水を、充分にたのしむのであった。

「ああさっぱりした。何と云っても水ほど好い気持なものはないねえ。

雄鴨は、青い色に美くしい頸を曲げたり延したりして羽根に艷をつけながら云った。

「ほんとにねえ。まるで生れ換った様だこと。

雌鴨も、連れの傍によって、白い瞼を開けたり、つぶったりしながら、一生懸命に身繕いをし始めた。

可愛いく胸を張り腰を据えて、如何にも優しい身ごなしで、油をぬったり、一枚一枚の羽をしごいたりして居る雌鴨の様子を、わきからだまって見て居るうちに、雄鴨はどうしても離れられない様な愛着を感じた。

彼には、その体つきの、キリリシャンとした所から、真黒い眼が割合になみより小さいのも気に入って居た。

「ほんとに好い形恰だ。けれ共どうもちっとあれが気になる。

雄鴨は、割合に美くしくない相手の羽根の模様に、仔細らしく小首を傾けたけれ共その、羽根の黒いポツポツが順序よく定まった大きさについて居ないと云う事は、却って全体の姿に若々しい不釣合、愛嬌と云う様なものを添えるばかりであると思いつくと、彼にとっては、羽の模様がほかのと異うと云う事が、尊い只彼女のみの持って居る宝物ででも有るかの