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ななかいのじゅうにん
七階の住人
宮本 百合子
「文芸春秋」1926(大正15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,128 字 · 15 页
二十越した娘ばかりなのだから、どこかに当人がいれば、簡単に言葉で云っただけで充分思い知らせる目的は達すであろう。あくどいやりかたが、伸子に強く嫌厭を与えた。シーツをつくねて置いた娘より、そうやって、威儀を整えた厳しい顔でそれをわざわざ拡げて見せて平気な者の方が、彼女には遙に憎らしかった。
「――思い当る方は、それでは後ほど私のところに来て下さい」
ミス・ハウドンは、軽く頭を動した。やっとシーツがしまわれた。吻(ほ)っとした空気が一どに感じられた。漠とした不快、ミス・ハウドンの処へ行く者などあるまいという見越し。皆いやな顔で、言葉寡(すくな)に客室を出たのであった。
伸子は、気が鬱し、真直再び狭い室に運びあげられる気がしなかった。
「歩いて登らない? あなたのところまで――」
豊子の部屋は四階にあった。
「ね、飯島さん、私やっぱり寄宿舎は嫌よ」
「――多勢人がいればどうしても自分だけ都合よくは行きませんよ」
「――でも――うるさいわ。――男の学生の寄宿舎でもこんなものなのかしら」
石の段々を、登っては曲り、曲っては登って行くうちに、伸子は汗ばむ位体じゅうが暖くなって来た。