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ななかいのじゅうにん
七階の住人
宮本 百合子
「文芸春秋」1926(大正15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,128 字 · 15 页
それにつれ、不機嫌もどうやら解(ほぐ)れ始めた。考えて見れば、太った体に肉桂色の絹服をつけ、鼻眼鏡をかけたミス・ハウドン。その傍に、皇后旗でも捧げるように拡げられた焼こげ大シーツ。怒った仔猫のようにむっとして、半円形に坐った沢山の学生が一斉にそれを睨んでいる悲愴な光景を、壁が見物したらどんなにおかしかっただろう!
――いきなり、伸子はさも嬉しいことを発見したように、階子を駈けつけて豊子の肩に手をかけた。
「ね、あなたクランフォードを読んだ?」
彼女は、ほくほく、悪戯(いたずら)ずきな眼を輝してつづけた。
「そっくりじゃあない? 心持が。――ね? ね?――ここにもあるのよ! クランフォードが……」
底本:「宮本百合子全集 第二巻」新日本出版社
1979(昭和54)年6月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第二巻」河出書房
1953(昭和28)年1月発行
初出:「文芸春秋」
1926(大正15)年2月号
入力:柴田卓治
校正:原田頌子
ファイル作成:野口英司
2002年1月23日公開
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