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ななかいのじゅうにん
七階の住人
宮本 百合子
「文芸春秋」1926(大正15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,128 字 · 15 页
食卓で、二日ぶりに豊子に会った。伸子は、ミス・ハウドンの心づかいで、わざわざ豊子の隣に席を貰ったのであった。
「どう? きのうはすっかりかけ違ったわね」
「ああ、私下町へ実験があって行っていたから――新聞が来ましたよ。よかったら見にいらっしゃい」
「今夜はお暇?」
豊子は、癖で下顎を押し出すように合点しながら、先輩らしく答えた。
「――まあいいわ」
伸子のところから、台所と食堂を区切る四枚の扉が正面に見えた。二枚目の扉を、ぽんと爪先で蹴りあけては、大きな錫の盆にスープ皿を並べたのを持った給仕娘がこちらに出て来ようとしている。胸のところに、嵩ばった重いものが邪魔しているので、脚が思うようにのびず、たっぷり蹴開かない。すぐ煽りかえす。も少しで盆迄ひっくり返しそうに戻って来る。また蹴りなおす。――気になってそっちを見ていると、左隣のミス・ホルフォードが、伸子に話しかけた。
「ミス・サッサ、貴女棕櫚箒お好き?」
「棕櫚箒? 棕櫚箒がどうしたの」
向うの角から、ミス・グレーが、ふき出したい顔をやっとしゃんとさせて、窘(たしな)めた。
「ドーラ!」
ドーラは、両方から弓形にくっつきそうな黒い眉の片方を挙げ、よくってよ。