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ななかいのじゅうにん
七階の住人
宮本 百合子
「文芸春秋」1926(大正15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,128 字 · 15 页
という表情をした。
「ね、貴女お好き?」
伸子は、大体、食卓の仲間を好いていなかった。見当のつかない顔をしていると、グレーがすけ太刀をしてくれた。
「――今夜、私どもは棕櫚箒を眺め通す光栄を得たんですよ」
あっち、あっち、と眼顔をする。そちらを見、伸子は苦笑した。
「お莫迦(ばか)さん!」
一番端れの客卓子に、まるで棕櫚箒のような髪をした若者が食事をしていたのだ。ドーラは、グレーをつかまえ、伸子にはきき分けられない書生言葉で、なお先刻の続きを何か云っている。そしては、こっそりふき出す。――豊子は、一切知らない風で、傍を通る給仕娘を呼びとめた。
「私にココアを下さいな」
種々な感情が映り、伸子は深い興味を感じた。
寄宿舎へ来る男の客は、下の広間でしか会えない。許可を得て準備が出来れば、八階の食堂で一同と食事することが出来た。伸子が来てから、そういう客は数人あったが、どの人もまるで田舎者のように間抜けて見える若者ばかりであった。また、そうでもなければ、こんながやがやした、不味(まず)さこの上ない寄宿舎の食事に来はしないだろう。招ぶ方も、招ばれる方も、都会馴れぬ人達らしかった。