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さんにんのそうせいじ
三人の双生児
海野 十三
「新青年」1934(昭和9)年9、10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,806 字 · 87 页
妾は彼の話を俄かに信ずることは出来なかった。明日、速水女史に聞いてみよう。とにかく今日は考える力のない妾だったから。
その夜を妾はどんなにか待ちかねた。今夜真一が妾の室で素晴しい海盤車娘の踊りを見せてくれることだろうと。
その夜に入ると、幸にも静枝は外出の支度をして妾のところへ現れた。これから約束があるので速水女史のところへ行ってくるといって、そのまま出かけた。
首尾は極上だった。自室の方はすっかり妾の手で準備が整った。そこで妾は決心をして、真一を呼びにいった。彼は呼ぶとすぐ部屋から現れた。そして子供っぽい顔を照れくさそうに赧く染めて、長い廊下を妾について来た。妾は海盤車娘踊の舞台を、いつも寝室にしている離れの寮に選んだのだった。
そのとき、廊下にバタバタと跫音がして、お手伝いさんのキヨが飛ぶように走ってきた。
「あ、奥さま。お客様がお見えになりました」
「お客様? 誰なの」
せっかく楽しみのところへ、お客様の御入来は迷惑だった。なるべく追いかえすことにしたいと思った。
「お若い紳士の方ですが、お名前を伺いましたところ、奥さまに逢えばわかると仰有るのです」