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さんにんのそうせいじ
三人の双生児
海野 十三
「新青年」1934(昭和9)年9、10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,806 字 · 87 页
「ああ、真公の生立ちが知りたいというのだネ。あれは今からザット十五六年も前、四国の徳島で買った子だったがネ。当時はなんでも八つだといったネ。病身らしい子で、とても育つまいかとは思ったが、肩のところにある瘤が気に入って買ってしまったのさ」
「誰から買ったんですの」
「さあ、そいつは誰だったか覚えていないが、とにかく何処の国にもある人売稼業の男から買った」
「その親は誰なんでしょう」
「さあ、その親許だが」
と老人は暫く考えていたが、「さあ、後に開演中の客席から大声をあげて飛び出して来た若い女がいたがネ、それがなんでも生みの母親とか云っていたが家出している女らしかった。父親というのは徳島の安宅村に住んでいるとか云ったが、その苗字は……」
と老人は首を曲げて思い出そうと努めているらしかった。妾は銀平老人の話を聞いているうちに真一の語った身の上が想像していたよりも正確であり、妾にとって実に興味のある話であることが分った。
「苗字は安宅というのじゃありませんの」
「イヤ安宅は後になってあっしがつけてやった名前だよ。真公の生れた村の名だからいいと思ったのでネ。さて、本当の苗字はちょっと忘れちまったネ。