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さんにんのそうせいじ
三人の双生児
海野 十三
「新青年」1934(昭和9)年9、10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,806 字 · 87 页
なんしろ古いことでもありあまり覚える心算もなかったのでね。ひょっとすると、梱の底に何か書附けとなって残っているかもしれない」
妾は老人に十分のお礼をするから、その書附を探してくれるように頼んだ。妾はそれから、蛇使いのお八重という女を知っているかと尋ねた。
「ああお八重かネ。あいつも先頃までいたが、可哀想なことをしたよ」
「可哀想なことというと……」
「なに、あの女は真公に惚れてやがったが、真公が居なくなると気が変になってしまって、鳴門の渦の中へ飛びこんでしまったよ」
「まあ、誰か飛びこむところを見たんですの」
「見たというわけじゃないが、岩頭に草履やいつも生命よりも大事にしていた頭飾りのものなどを並べてあったのを見つけたんだ。それから小屋の中からは、皆に当てた遺書が出て来たが、世を果敢んで死ぬると、美しい文字で連ねてあった。あの子は仲間の噂じゃ、女学校に上っていたことがあるらしいネ」
「死骸は上ってきたんでしょうか」
「さあ、どうかネ。――なにしろあっし達は旅鴉のことであり、そうそう同じ土地にいつまでゴロゴロして、出奔した奴のことを考えている遑がないのでネ。それと鳴門の渦に飛びこめば、まあ死骸の出ることなんざ無いと思った方がいいくらいだよ」