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さんにんのそうせいじ
三人の双生児
海野 十三
「新青年」1934(昭和9)年9、10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,806 字 · 87 页
最早妾たちは折角の料理に箸をつける気もなくなって、そのまま外に出た。池の端を本郷に抜ける静かなゆるい坂道を貞雄に助けられながらゆっくりゆっくり歩を搬んでゆく――が、妾の胸の中は感情が戦場のように激しく渦を巻いていた。
「君の胎の子の父親はねエ」
と貞雄は耳許で囁いた。
「――駭いてはいけない、この僕なんだよ」
「まア、貴方ですって、――」
妾はそれを聞くとカッとして、思わず貞雄をドンと突き飛ばした。
「ああ悪魔! 恐ろしい悪魔!」
と妾は喚きつづけた。
「貴方と妾とは血肉を分けた兄妹じゃありませんか。それだのにこんな罪な子供を姙ませるなんて……ペッペッ」
と、妾は烈しく地面に唾を吐いた。
「ま、そう怒ってはいけない。君は誤解しているようだ」
と貞雄は恐れ気もなく、傍に寄り添って来ながら、
「僕は誓う。また君自身も知っているだろうが、僕は絶対に君と性的交渉を持ったことはないのだ。ね、そうだろう。――だから怒ることはないじゃないか」
そういわれると、妾にもその忌わしいことの覚えはなかったが、それにしても……。
「じゃあ、それが本当なら、なぜ妾は貴方の胤を宿したのです。