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さんにんのひゃくしょう

三人の百姓

秋田 雨雀

「婦人公論」1920(大正9)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,876 字 · 12 页

青空文庫

伊作は丈の高い一番丈夫な男だけに、峠を登る時は、二人から一町ほども先きを歩いていました。多助と太郎右衛門は、高い声で話をしながら坂を登って行きました。二人は浜へ嫁に行っていた村の娘が、亭主に死なれて帰って来たという話を、さもさも大事件のように力を入れて話していたのでした。

峠を越すと、広い平原になって、そこから城下の方まで、十里四方の水田がひろがって、田には黄金の稲が一杯に実っていました。

「伊作の足あ、なんて早いんだべい!」

と多助は太郎右衛門に言いました。

「ああした男あ、坂の下で一服やってる頃だべい。」

と太郎右衛門は笑いながら答えました。多助と太郎右衛門が、峠を越して平原の見えるところまで来た時、坂の下の方で伊作が一生懸命に二人の方を見て、手を振っているのが、見えました。

「どうしたんだべいな? 伊作あ、己らを呼んでるてばな。」

と多助が言いました。太郎右衛門も顔をしかめて坂の下を見下しました。

「早く来い、早く来い……面白いものが落ってるぞ!」

という伊作の声がきこえて来ました。

「面白いものが落ってるよ。」

と多助は、笑いながら言うと、太郎右衛門も大きな口を開いて笑いました。