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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

しかしその怪魚の身体の下部はどれくらい長いのか、どんな形になっているのか分からないので、胸までのり出したように思うだけであった。

そのうちに怪魚の数がふえた。二、三十ぴきにふえた。しかもその怪魚たちは、上半身を水面からのりだしたまま、一ヶ所に集まってきた。そして、ひゅうひゅうというような奇妙な声をあげ、たがいに首をねじまげ、顔をくっつけあいする。

「あの魚は、声を出すよ。ああ気味が悪い」

キンちゃんは、正吉にしがみつく。

「声を出すだけではないよ。あれは、話をしあっているんだよ」

「えッ。話をしあうって。魚と魚と話ができるのかい。いやあ、たいへんだ、いよいよお化け魚ときまった。とてもたべられるしろものじゃない」

キンちゃんは青くなった。

「あの様子を見ると、あの怪魚はぼくらの知っている魚よりも、ずっと高等動物にちがいない。ほら、あの怪魚たちは、さっきからぼくらのいるのを知っているんだよ。だから怪魚たちはスクラムをくんで、じわじわとこっちへ近づいて来る」

「なに、こっちへ近づいて来るって。それはたいへんだ。逃げよう」

「なあに、大丈夫。怪魚たちは、ぼくたちとなにか話をしたいのかもしれない」