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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

と、正吉はキンちゃんにくりかえし注意をあたえた。

正吉の予想はあたった。

その奇魚どもは間もなく水面に、大きな顔を出した。それは、正吉たちが見なれている魚のようにとがった顔をしていないで、こぶのような丸味をもっていた。そしてとび出した二つのぐりぐり目玉が、しきりに動いた。

「ふーン。あれでも魚かしらん」

と、キンちゃんは、思わずうなった。

「それは魚にちがいないさ。水の中にすんでいるんだもの。そして、ほらひれみたいなものがあるし、顔だって魚に属する顔付きじゃないか」

正吉が、ひそひそとささやいた。

「そうかなあ。しかし、あの魚はたべられそうもないよ。毒魚じゃないにしても、肉の味がとてもまずいにちがいない。がっかりだい」

キンちゃんは、たべられないと判定した。

「そうれ、ごらんな。だが、キンちゃん。もっと辛抱して、あの魚どもがどうするか、見ているんだよ。たべないにしても、一ぴきぐらいはつっていこう。おみやげになるからね」

怪魚は、だんだん姿をあらわしていった。水面からよほど身体をのりだした。なんとなくそれは、その怪物が胸から肩の方まで出したように思われた。